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2004.06.24
< 「ひとり」終了、次のお題発表 >
最近のトピックスは、ゲッツ板谷さん中原昌也さん(私は両者の大ファン)と鼎談したことかな。今出てる「SPA!」に記事が出てますのでご笑覧ください。
あと芥川賞作家の長嶋有さんhttp://www.webpoplar.com/beech/とも対談しました。長嶋有の初長編『パラレル』(文藝春秋)は大傑作! バツイチの佐々木あららさんも涙(と笑い)なしには読めないです。
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そうそう、6月20日のテレビ番組『いのちの響』、観てくれた人っていますか。画面にはうつらなかったけれど、あの撮影の日に即興で短歌をつくりました。
しめきりに追われるような毎日はいつかの僕が夢みた暮らし (枡野浩一)
こういう短歌は私ひとりが知っていればいい短歌で、いつもだったらパソコンの中に眠らせておきます(今回は特別サービス)。私がメディアに発表するのは、「自分以外のだれかが必要としてくれるかもしれないと思える作品」だけで、それは必ずしも「不特定多数の人にウケる作品」とイコールでは結ばれません。
だれもに好かれようとしている作品は、だれにも好かれない……という話を番組の中でもしました。
ココログで短歌を募集していて面白いなと思うのは、私がコメントをする前に、いい作品には自ずと反響が書き込まれてしまっている、ということです。近々「佐々木あららプチ特集」(あららには「ミニ」より「プチ」が似合う気がして)をやりたいなと思ってるのですが、私がコメントをすることでせっかくの「反響」を封じてしまう気もするので、もうちょっと様子を見てみることにしますね。
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えー、繰り返しますが6月29日、ラジオhttp://www.nhk.or.jp/tanka/に出ます。生放送です。考えるところがあって、この番組に私が出るのは今回が最後になると思います。有終の美ということで心をこめて出演しますので、どうぞよろしくお願いします。
今週は「178」の投稿を拝見しました。
あまり厳しく見たつもりはないのだけれど、選んだのは少なめ。
ただ、新顔さんが少しずつ増えていることは嬉しいです。常連さんも焦らず、まあ、淡々と参加してみてください。短歌って一生のうちに1首でも自信作ができれば充分だと思います。
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一人でに身についたことが体内の水より増えて扱いづらい (樫子 麻理)
新顔の樫子麻理さん。
なんか意味不明なこと言っていますが、「短歌の主人公本人は何かを確信している」という手ざわりが伝わってきて、ひかれました。
この短歌はのちに改作されていますが、元の形のほうがいいと思う。
さぁ皆で私一人を的にしてカラーボールを投げつけてくれ (樫子 麻理)
この短歌ものちに改作されていますが、樫子麻理さんは改作をすると駄目になるタイプなのか。
樫子麻理さんのblog参照。彼女が短歌に添えたエッセイが面白かったのでそれを短歌化してみましたという人までいましたが、ちょっと待ってください。
短歌本体より、添えられたエッセイのほうが面白い……それは短歌が失敗しているということです。なので樫子麻理さんはエッセイなしで伝わるような短歌を書かなくてならないし、また、第三者が樫子麻理さんのエッセイを「短歌化」したくなってもそこはぐっと我慢、樫子麻理さんが新たな短歌を生むまで見守ってあげるのがいいのではと思いました。
ともあれ、「さぁ皆で私一人を的にしてカラーボールを投げつけてくれ」という欲望の表明は新鮮でした。樫子麻理さんのエッセイを読むと「なるほどこういう意図だったのか」というのはよくわかりますが、意図をきっちり伝えることだけが短歌の面白さではないかもしれない。そのへん、考えてみてください。少なくとも改作は、説明的で面白さ半減です。
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ビニールの傘にわたしは守られてひとりでだって帰れますから (松下知永)
松下知永さんもこの短歌を改作していますが、「ビニールの傘にわたしはぶら下がり」というフレーズは、うーん、詩歌にはありがちな比喩で、いただけませんね。私は「詩的にしようと狙っていてそのじつ効果的でない比喩」をいちばん排除したいと考える歌人なので。
「守られて」がベストではないとも思うけれど、わるくはない。「ひとりでだって帰れますから」という強がりはチャーミングでした。
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ねじ花のねじれについて考える一人一人のねじれについて (秋野道子)
このところ目立っている秋野道子さん、この短歌はちょっとひとりよがりだと思うんだけど、なんか作者の中にゆずれない何かがあるような気がして、スルーすることができなかった。
秋野道子さんはまず、完成度を気にせず、たくさん書いてみるといいような気がします。
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1人でも多くの人を傷つけるその為にある言葉みたいだ (安藤三弥)
ご本人も自覚しているように、「言葉」のところは取り替え可能。
特別うがった見方ではないけれど、この素直さはきっと遠くまで届きます。
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今日くらい一人にさせて クリネックス五個入りパック抱えて帰る (田丸まひる)
そのオーソドックスさが、気になる短歌でした。
ネピアではなくクリネックスなんですね。ティッシュの五個入りパックを抱えて帰るとき、人はみんなどこか孤独なのでは。そんな感想を持ちました。
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人ひとり食べてくことがやっとなのそういうことなのごめん黒ネコ (藤矢朝子)
一見無駄に思える「そういうことなの」が効いています。
拾えないネコに向かって言いわけをしないと気が済まない心、それがよく描けていると思いました。好き。
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寂しさで死ねるうさぎがうらやましい ただひたすらにピザ屋を待ってる (古川亜希)
前半の心情吐露は、ありそうでなかった。「うさぎ」という可愛いものを出してきて、この暗さ。
「ひとり」というお題からは外れるけれど、孤独な1首です。
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独り言呟く相手がうさぎから無口な背中に替わっただけだ (龍見元菜)
個々の言葉は「ベタ」で洗練からは遠いんだけど、現在は「無口な背中」、以前は「うさぎ」に独り言をつぶやいてたというストーリー設定が凄くて、目にとまりました。
こう並べてみると、うさぎって存在それ自体が淋しいのかなとも思う。そういえば太宰治『人間失格』のうさぎが出てくるシーン、かなしすぎて笑わない?
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退屈な私は耳を動かせる(ひとりのときに確認してる) (伊勢谷小枝子)
伊勢谷小枝子さんはテクニシャンで、今回は( )を駆使した作品をいくつか見せてくれました。
ひとりのときに確認してるんですか。それはそれはひとりだ……。
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コロッケが今日は美味しく出来たんだ一人暮らしじゃなくて良かった (英田柚有子)
最後の1首はこれ。
「一人」という言葉をつかって、「一人じゃないこと」の喜びを表現してくれました。
些末なことですが「出来たんだ」のあとは1文字あきをいれることをおすすめします。(1文字あきをいれないほうが詩歌のプロっぽく見えるんだけど、そんなプロっぽさは邪魔なだけ、というのが枡野浩一のスタンス)
この短歌はつまり、「かつて一人暮らしだった頃の記憶」をふまえているから、ぐっとくるんだと思います。
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というわけで「ひとり」はおしまい。
来月のお題は「結婚」です。今までとちがって妙に具体的。
なぜこのお題なのかということは、来週お話しますね。
結婚はめでたいことだ 臨終はかなしいことだ まちがえるなよ (枡野浩一)
2004 06 24 05:02 午後 | 固定リンク | トラックバック
2004.06.17
< 「ひとり」評その3 >
枡野浩一の連載の感想を正直に書いたりしたら自分の短歌が選ばれなくなりそう!
そんなふうに思っていませんか。当たってるけど……。まあ、いいや。どんなに連載を抱えていても物書きはひとり。だれひとり自分の言葉を読んでいないという認識で書き続けるしかないのだと思います。
6月20日、テレビhttp://www.otrfilm.com/inochi.htmlに出ます(ゲスト河井克夫! 放送時刻は変更されるかもしれないので、新聞のテレビ欄などでご確認ください)。6月29日、ラジオhttp://www.nhk.or.jp/tanka/に出ます。
後者は投稿募集中です。「付け句」に関しては本当はもっと丁寧な説明が必要だと思いますが、とりあえず私が編集した付け句の絵本『どうぞよろしくお願いします』(発行=マーブルトロン、発売=中央公論新社)を読んでみてください。
だからってコーナー名が「付け句でGO」
それってちょっとどうかと思う (枡野浩一)
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今週は「159」の投稿を拝見しました。このくらいの量だと、気分的にじっくり読めるな。
選んだ作品も少なめですが、それは全体の水準が高かったので、厳しめに選んだからです。
おとといiBookがクラッシュして、今いつもとちがう機械で書いているため言葉少なだけど、次週フォローしますのでご勘弁を。
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ちょうどいい独り加減になったんだ みんながいるし あなたがいない (栗原あずさ)
ドロボウが入ったことにしたい部屋 気づいてたけどひとりぼっちだ (栗原あずさ)
2首とも改作ですが、きれいに着地したと思います。
改作を試みたほかの皆さんも、くじけずに再挑戦してみてください。
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これだけは確かなことだ 格安の卵は一人一パックまで (辻一郎)
よく出来ています。
耐えるのだ ウォークマンの蓄電池ケースのふたがすぐ壊れても (枡野浩一)
という1首と構造がやや似ている気がしますが、まあ「あり」でしょう。
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僕たちの押さえきれない放課後のひとりひとりにひしゃげたコーク (松下知永)
「ひしゃげた」という言葉が妙に詩的で違和感があるけれど、その違和感はむしろ味わうべきなのかもと思い、選びました。
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1人して120円にぎりしめ涸れない井戸のある街にいる (秋野道子)
秋野道子さんの作品はいくつか目にとまりました。
「1人して」という言葉が活きている。
「涸れない井戸」というのが雰囲気に流れてる気もするけれど、全体から伝わってくる「渇き」に心ひかれました。
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一人ではできないことにしておこう 今日もヒロシに電話するため (丹生谷歩美)
前半がいいです。後半は改善の余地あり。
ほんとはそんなこと、一人でもできちゃうんだよね。
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ひとりきり逆巻く髪を固めてる もっと世界を好きになりたい (木村比呂)
後半がいいです。
でも「ひとりきり」は、とってつけたよう。再考を。
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ひとひとりゆったり入れそうな箱 真白い花が好きだった人 (青野ことり)
お葬式のワンシーンでしょうか。
「そうな」と書いてあるから、今はまだ人は入ってないの? 少し説明不足かな。
「真っ白い」ではなく「真白い」なのは、文字数合わせまたは文学趣味に見えてしまい少しマイナス。
でも、全体の淡い感じが目にとまりました。
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野球、嘘、捨てゼリフ、駄々、体位、UNO 全部ひとりの部屋で覚えた (伊勢悟史)
こういう単語羅列短歌はよくあるのですが、でも単語選びのセンスのよさ、「全部ひとりの部屋で覚えた」というまとめのうまさで選びました。
この1首は佐々木あららさんへの返歌みたいですね。佐々木あららさんの作品は今週よかったのですが、お題とは関係ない作品が多かったので、今度「佐々木あららミニ特集」でもやりますね。
*
では、次週「ひとり」の最終回です。
2004 06 17 06:46 午後 | 固定リンク | トラックバック
2004.06.11
< 「ひとり」評その2 >
『枡野浩一のかんたん短歌blog』もいよいよ次の次の週で最終回!
……なのかと思っていたら、来月以降も続くことになりました。
転校すると思って優しくしていた友達が、急に転校とりやめになってしまった時の気まずさを噛みしめながら、今後ともどうぞよろしくお願いします。
先日、こういうところ[ blog-gold ]でも紹介していただきました。ただただ感謝です!
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そうだ。おわびというかご報告。
毎日新聞の連載、東日本版は毎週日曜日に掲載されるのですが、地域によっては掲載曜日が変わるみたいです。そして全国で読めるとは限らないとの噂も……。探してしまった人がいたら、すみません。
詳細は「週刊朝日」連載、来週火曜日発売の号に書きました。
連載の感想とかを書いてくれる人、いないかな。
さて。以下は先週載せられなかった、枡野浩一の「ひとり」短歌オールキャストです(一部割愛)。
ローソンに足りないものをだれひとり思いだせない閉店時間
この星でエイズにかかっていないのはあなた一人だ 孤独でしょうね
わけもなく家出したくてたまらない 一人暮らしの部屋にいるのに
一人でも眠れるけれどデニーズで一人で明かす夜はひもじい
ひとりでに目ざめた朝は髪の毛もしっぽも立ったまんま歯みがき
短歌を調べてくれた佐々木あららさん[ 僕の腎臓が大変なことに!ANNEX ]をはじめとして、協力してくださった皆さんに、ただただ感謝です!
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今週は、「194」の投稿を拝見しました。
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下駄箱にあの子の名前がもうなくて ひとり足りない野球をしてる (出石正比古)
まずは過去の投稿の改作から。
すっきりとイメージが伝わるようになったのではないかと思います。
推敲の過程は出石正比古さんのところを参照してください。これくらい迷ったあげくの字余りなら、問題ないと思います。
*
人生はともかく人生ゲームには最低一人相手がほしい (志井一)
先週の段階で投稿されていた作品で、メモしていたのに、うっかり紹介するのを忘れていました。
いつも、先週の投稿作も念のため読みなおすことにしているのですが、「なぜ枡野浩一はこれをほめないのだろうか」と思うことがあったら、疑問をトラックバックしていただけると助かります。……なぜほめなかったのか、ご説明できる場合もあるでしょう。
この短歌は「人生はともかく」という前置きが効いています。そして「人生ゲーム」のことを語ることによって、人生にも最低一人は相手がほしい、ということを暗に伝えていて秀逸。
たくさんの人に出会えるのはきっと一人で旅をしているからだ (志井一)
こちらは完成してない気もするのですが、「一人旅だったから人に出会える」ということは、確かにあるかもしれませんね。恋人と一緒だったら、異性からは声をかけてもらえないだろうし。
ということを読者に伝えるためには、もうひと工夫が必要なのかな。これでいいのかな。
皆さんのご意見も知りたい。
校庭に僕は一人で立っている まわりに人は何人かいる (志井一)
これも、気分はわかるんだけど。
まわりに人がいるけど孤独だ……という意味かな。だとしたら後半が説明的という気もする。
このままでいい気もする。
皆さんの意見が知りたい。
これからは一人で生きる ただしこの決意を君に伝えてからだ (志井一)
こういったシンプルな矛盾を描いた作品、ほかにも多かったですが、よく出来ているので挙げました。
ちなみに志井一さんへの余談ですが、聖徳太子は架空の人物だったという説が、今は定説らしいですよ。
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軽すぎるリュックをひとりで背負ってた なにもかも入れたはずだったけど (伊勢谷小枝子)
よいと思います。
なにもかも入れたはずだったのに軽すぎるリュック。自分ひとりだけ何かまちがえているのではないか、という孤独が伝わってきました。
子供時代の遠足の短歌だと思って読んだんだけど、どう?
ひとりでも楽しめるっていうことを今すぐ誰かとわかちあいたい (伊勢谷小枝子)
これは志井一さんの最後の短歌と構造が似ているけど、主張に説得力がありました。
「今すぐ君とわかちあいたい」だと、また別のニュアンスが生まれますね。
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お母さん 怖いものなどもうなくて今日はひとりで飲んできたんだ (緒川景子)
〈母さん。〉という呼びかけで始まる一言ネタを集めた、164と書いてヒロシと読む人の書いた『母さん』(洋泉社)を連想しました。
怖いものなどもうないとお母さんに呼びかけるとき、主人公はやはり何かを怖がっている気がして、そのへんがよかったです。
ただひとりわたしのために作られたものは貴い それが嘘でも(緒川景子)
この短歌は「ただひとり」のところが文法的に少しちぐはぐな感じ。
内容はいいと思います。推敲してみてください。
*
片恋は一人相撲だ それなのにあなた無しには取り組めないんだ (藤本洋子)
これもシンプルな矛盾を描いている。「片恋」という言葉は、かたくない?
*
「ひとりでは寂しいだろ?」だなんていうキミはふたりでも満足しない (紫月美夜)
ありそうで、類似案はなかったですね。
内容はいいが、リズムが悪いです。ご一考を。
*
ひとりですあすもときどきひとりです 雨でも降ればいい気味でしょう (平賀谷友里)
「いい気味でしょう」というフレーズにひかれましたが、そういえば柴田有理さんか脇川飛鳥さんの短歌に似たフレーズ、あったかも。気づいた人、おしえてください。
*
ちょうどいい独り加減になった みんながいるし あなたがいない (栗原あずさ)
「ちょうどいい独り加減」とは、よく言ったものです。微妙なことを描こうとしている意欲に1票。。
シンプルな矛盾をきれいに描くというのは、もう枡野浩一が得意とする作風だから、どうしてもそれ以外の作風にひかれてしまいますね。
ただし、前半が575になっていないです。再考を。
*
防災の日でもないのにテーブルの下に一人でいることがある (あきつよう子)
淡々とした状況説明で孤独を伝えていて、心に残りました。
*
一人きりだからといって僕の骨そんなにかきまぜないでください (辻一郎)
不思議な味わいの短歌。Hな感じもしました。
お骨を箸で掻き混ぜるのを見たことありますか? 愛猫の骨だったんだけど笑いをこらえるのに必死でした。
*
今週は以上です。ちょっと常連さんのかげが薄かったかな? また来週!
2004 06 11 02:25 午後 | 固定リンク | トラックバック
2004.06.04
< 「ひとり」評その1 >
今週は松尾スズキさんにくらべたら全然ヒマでした。
という屈折した言い方で自らの多忙ぶりをアピールし、松尾さんと面識があることを遠まわしに自慢してみました。
枡野浩一の「ひとり」短歌、いろいろ傑作があった気がするのですが、自分の短歌を記憶の片隅からピックアップしタイピングして念のため本で誤字がないかどうか確認するなんていう卑屈な行為ができないほどの慌ただしい日々だったため、また今度。にさせてください。っていうか、だれか代わりにやってくれませんか……枡野浩一の本たくさん持ってる人! ひとりくらいはいないの? 助けてください! 世界の中心でさけぶ僕を助けてください!! 映画も見たし原作も謎解き本も読みました『……愛をさけぶ』。
あしたの土曜日、東京地方の人は朝日新聞夕刊を読んでね。連載コラムで謎解き本のこと書きました。
そしてあさっての日曜日、毎日新聞で新連載が始まります。毎週です。全国で読んでください。
連載のしめきりがこんなにも毎日のように訪れていいのかしら。ひとりになるとわいてくるそんなかなしい不安を頭から振り払い、今週も笑顔でお届けします、『枡野浩一のかんたん短歌blog』。
絵・武山忠司
今週は「232」の投稿がありました。
われながら、いいお題だったと思うけれど、難しかったかも。
常連さんの作品は厳しめに選びました。
*
一人きりサーティーワンの横で泣き ふるさとにする吉祥寺駅 (木村比呂)
「ふるさとにする」ということは、ふるさとではないのですね。
転校生チルドレン(角川文庫『君の鳥は歌を歌える』参照)である私には気持ちがわかる歌です。サーティーワンのある吉祥寺在住だし。
そうでない人の感想が知りたい。木村比呂さんのblogに書いてください。
ひとりでは出来ないことを考えて血液型をとりあえず聞く (木村比呂)
似たテーマの作品は多かったけれど、この短歌のキーは「血液型をとりあえず聞く」です。
こういう具体性があると、「あらすじ短歌」から遠ざかりますね。
セックスしたくなったからナンパした、というあらすじなの? これって。ちなみに。
僕はまたひとりでいます 君の歌 好きだったけど今も好きです (木村比呂)
「好きだった」ときて、「けど」でつないで、「今も好きです」と落としましたか。
広告のコピーライターならよくやる手だけど、わりとすんなり楽しみました。
「君のこと」ではなく「君の歌」としたのがよかった。「こと」だとストーカー呼ばわりされちゃうし。
*
百人も集まっちゃうとかさむから一人力で何とかします (柴田有理)
「かさむから」という語彙がいい。手づかみで取りだした言葉という感じがして。
観客が一人いるのでもう少し生き物っぽい顔をしましょう (柴田有理)
これも同様。「生き物っぽい」という言い方で、短歌が成立しています。
*
ハイヒール履いても死んだりしない人ばかり住んでる都会でひとり (鳴井 有葉)
この短歌を見て佐藤真由美の作風を連想しました。読んだ?
帰り道ひとりになると君の名でいっぱいになってしまうたすけて (鳴井 有葉)
うまいんだけど、なんていうのかな……。
NHKの短歌コンクールで佳作とかとりそうなうまさです。
グランプリはとらない。
あなたはきっと短歌をわりと本格的にやっている人ですね。
もっと別の地点に行きたいと本気で思う人は、変われると思います。
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ひとり好きひとり小鳥と住んでます檻の中なら安心に死ぬ (安藤三弥)
これも同様。「檻の中なら安心に死ぬ」が、安心な鋭さというか。
今後に期待。
*
思いきり傷つくような捨て台詞考えている 一人になって (山田あさひ)
推敲で迷ったようですが(山田あさひさんのblog参照)、語尾は「一人のときは」より「一人になって」のほうが断然いいです。
後者のほうが「動き」があるでしょ。相手との関係性が見えるというか。
鳴井有葉さんの短歌も参照(かぶるかな?)。
あと、加藤千恵の短歌に同案があった気もする……だれか調べて!
*
特別な2人じゃなくてありふれたひとりとひとりだったみたいだ (小島けいじ)
これは模範回答的な正解。ここから、もっと遠くへ行けるといいですね。
*
なにもかも二分の一で生きていく 気づいてたけどひとりぼっちだ (栗原あずさ)
これは「気づいてたけど」がいい。改めてまた気づいた感じがして。
前半はふつう。
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もう二度とひとりはいやと言う君はハルマゲドンとか信じるタイプ (松下知永)
後半がよかったです。この前半はあまり後半をいかしてない。
*
二人より一人がいいと言っただけ 母の涙の意味が不明だ (ナシノ)
「意味が不明だ」は「意味不明」という熟語を無理に七五調にハメたみたいに見えてマイナス。
わざとかたい言葉にした、という気もするけど。
あと、まだちょっと「あらすじ短歌」っぽいかな……。
*
街へ行くあの子のいない放課後にひとり足りない野球をしてる (出石正比古)
前半は「あらすじ短歌」的だが、「ひとり足りない野球をしてる」という物語性にひかれました。
よくある発想といえば、そうなのかな。ちょっと頭で考えないと読解できないところもある。
推敲できるなら、試みてみてください。
*
一人ならいつものことだ だけど今テレビはつけっぱなしにしている (辻一郎)
こういうのが、模範回答をちょっと上回っている例。
「一人」以上の孤独感が伝わってきます。
*
「ぼっち」とか「きり」とか「だけ」っていう尾っぽすら逃げちまい どうする? 「ひとり。」 (佐々木あらら)
これはチャレンジ精神を買いました。
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今週は以上。
ところで、他人の作品を利用してつくった短歌(パロディ、本歌どり)に関しては拙著『日本ゴロン』(毎日新聞社)に書いたことがあるので繰り返しませんが、こんなやりとりhttp://yuraku.tea-nifty.com/days/2004/05/post_42.htmlをしたので参照してみてください。
というわけで、また来週。










