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2004.07.30
< 「結婚」評その5、次回のお題発表 >
皆さん対談してますか?
私は対談づいてます。きのうは漫画家・さかもと未明さんと対談(「SPA!」掲載予定)。その前々日はリリー・フランキーさん松久淳さんと鼎談(「野性時代」掲載予定)。来週には漫画家・内田かずひろさんとの対談も控えています(絵本に関する本に収録予定)。今出てる「anan」は……見て見ぬふりして!
NHK生出演は、いよいよあしたです。ラジオとテレビの連動企画。http://www.nhk.or.jp/tankaで、短歌を募集中です。どうぞよろしくお願いします。
*
『かんたん短歌blog』の単行本に関するご意見、ありがとう。
んー、やっぱ「添削」は人気あるんですね……。私は添削するのけっこう得意なんですが、何年かいろいろやってみた実感から言うと、添削って自己満足。読み物としてはまあ面白いし、読んでると短歌が上達したような気もするんだけど、作者本人のためにはちっともなりません。加藤千恵さんも佐藤真由美さんも私の添削なんか軽ーく受け流し、勝手に上達してプロになりました。
なのでまあ、私の「自己満足」と自覚した上で、来月あたりちょっとだけやりましょうかね、添削。『かんたん短歌blog』を始めた当初の方針は、「面白いものだけとりあげていく。つまらないものは無視!」だったんだけど。
*
今週は「124」の投稿を拝読しました。
あー、難しいテーマでしたね……。
しかも今月は更新が5回もあって大変でした。原稿料は「月額」で貰ってるため、ちょっぴり損した気分!
*
まずは改作から。
「ひとりでは寂しいだろ?」と言うキミはふたりでいても満足しない (紫月美夜)
いつの投稿作だったかも忘れてしまったけれど、この改作はまあまあですね(「では」という言葉が硬いかな……)。紫月美夜さんの恋愛経験が透けて見えるかのような、年季を感じさせる1首。
私は最近、『負け犬の遠吠え』やら『結婚の条件』やらを読んで、恋愛と結婚を勉強中です。いつの日か「ひとりでは寂しいだろ?」なんて言えるような男になりたい……。そう思ってる時点で、無理。
とめないよ だけど真里ちゃん、小田さんと結婚するって本当ですか? (平賀谷友里)
これは先週の付け句「結婚するって本当ですか?」の改作。ちょっとした表記の変更のみですが、念のため紹介しておきます。
*
次は付け句、「●と結婚してくれますか」。
自転車に顔が似てると言われます 私と結婚してくれますか (丹生谷歩美)
いるいる! 自転車に似てる人。新幹線に似てる人もいるよねー。
正直でよろしい。でも結婚するには正直なだけでは駄目。男の金と女の顔を交換するというのが結婚の本質だと本に書いてあったよ……こわいね。
*
今週のオリジナル作品は3首選びました。
ベランダに猫が遊びに来てくれた きのう結婚すればよかった (遠藤なお)
「きのう結婚すればよかった」という、不思議な後悔の仕方に心ひかれました。
前半は「?」。改作してみますか?
この暑い夏に結婚したんだね 結婚お見舞い申し上げます (遠藤なお)
「結婚お見舞い申し上げます」というのがいい。歌謡曲の詞になりそう。
でも前半は単なる説明になってしまっています。改作してみてください。
たまらなく結婚したくなったので今日は会社をお休みします (佐々木あらら)
会社を休む理由に結婚を持ち出すとは、さすがあらら。意外な角度からの攻撃に、笑わない課長代理も絶句です。
*
というわけで、結婚は難しいという当たり前の結論に、駈け足で辿り着きました。
来月のお題は「愛」。
愛という漢字が含まれていれば、「愛でる」「愛しい」などもOKとします。ただし、「ラブ」とかは駄目ね。
ここでクイズ。なぜ8月のお題が「愛」なのでしょう? 正解を最初にトラックバックしてくれた1名様に、8月に出る枡野浩一の本を2冊セットでプレゼントします。『結婚するって本当ですか?』(朝日新聞社)は5日発売、『もう頬づえをついてもいいですか?』(実業之日本社)は19日発売です。どうぞよろしくお願いします。
2004 07 30 10:17 午後 | 固定リンク | トラックバック
2004.07.23
< 「結婚」評その4 >
今週はイントロの文章、省略。
無印良品のような爽やかをめざしてみます。
いつもトラックバックを期待して、つっこみどころの多い文章を書いているつもりなのに、皆さんが大人な感じでスルーするので淋しい。こんなに雑談がないblogってどうなの? ちょっとどうかと思う。出会いもないし……。
『かんたん短歌blog』単行本化へのご意見も、トラックバックは1つだけ?(麗しの紫月美夜さん、ありがとう……)
あ。もしかしたら、短歌に添えるような感じで何か書いてくれた人もいるのかな。申しわけないですが、トラックバックは最初の1行しか読まないこともあるので、単行本化に関するご意見があるかたは、別途トラックバックしてやってくださいね。
告知をひとつふたつ。
7月31日、フジロックにも行かず、NHKに生出演します。ラジオとテレビの連動企画。http://www.nhk.or.jp/tanka/で、短歌を募集中です。どうぞよろしくお願いします。
だけど別のロックフェスには行きます。私と同じ顔の男・河井克夫と、愛する松尾スズキを見に……。もし会場で見かけたら、声をかけてね。私と何かしたい人は、強引に誘ってください。内気なので私からは手を出しません。
*
今週は「181」の投稿を拝読しました。
やっぱり選んだ作品は少しだけですが、まあ、厳選ということで……。
*
まずは、オリジナル短歌から。
けっこんて血の痕と書くほうですか? それとももっと残酷なもの? (遠藤なお)
「?」のあとの1文字あきは、私が無断でいれました(今まで何度も「1文字あきをいれて」とアドバイスしてきて疲れたので)。拙著『日本ゴロン』(毎日新聞社)参照。「私は考えてわざとこうしたの。勝手にいれないで!」と思ったら、抗議してください。
この短歌の語尾は、「それとももっと残酷なほう?」でもいいような気がします。どう?
保冷庫にしまったアイスクリームを 結婚しよう 思い出してる (木村比呂)
この短歌はねえ……、読解力と想像力のある私には面白かった。でもちょっと言葉足らずにも見える。
ほかの皆さんはどう読みましたか? blogに感想を書きこんであげてください。
僕の背のチャックに気付いて知らんぷり決め込む君とは結婚出来ない (龍見元菜)
「気付く」「決め込む」「出来ない」など、ひらがなと漢字のバランスが大雑把な気がします。
「背」という言葉の選び方、全体のリズムなども、あんまり考えぬかれてない印象。
描かれている内容はよくわかります。推敲してみてください。
ピクミンの真似が上手になっている 結婚前とは別の人です(英田柚有子)
「結婚前とは別の人です」。この言いきりがよかった。
たとえば「結婚前とは別人のよう」だったら、没でした。
*
次は付け句、「結婚するって本当ですか?」。
……なんでこうなっちゃったんだ? ぼくたちが結婚するって本当ですか? (伊勢悟史)
「ぼくたちが」にしたアイデアは成功。
でも前半は、後半を補完するためだけに存在しているようで、惜しいです。改作してみてください。
止めないよ だけど真里ちゃん、織田さんと結婚するって本当ですか? (平賀谷友里)
「止めないよ」は「とめないよ」「やめないよ」両方の読み方があります。ひらがなにしては?
ネタとしては古典的ですね。それに名前組み合わせネタは、先週もありましたよね。
だから面白さは中途半端だけど、付け句遊びの答えとしては一応○をつけざるをえないので嫌々選びました。
「織田真里」「水田真里」「神田はな」「花岡美奈」などなど、結婚して変なフルネームになってしまう人は多いようです。
でもね、別に男のほうが名字を変えてもいいんですよ。私は結婚して名字が変わり、離婚後もそれを残したので「枡野」は今では本名ではありません。
ひろみさん! ぼくがいながら三度目の結婚するって本当ですか? (みうらしんじ)
「ぼくがいながら」がよい。三度目にも選ばれなかったくせして自意識過剰で。
「ぼくがいながら」シリーズでもう1作つくってくれましたが、私は「できちゃった結婚」という言葉が大嫌い(『日本ゴロン』参照)。その個人的嫌悪感を乗り越えるほどは面白くなかったので、そっちは選びませんでした。
ドラえもんぬきでのび太の人柄と結婚するって本当ですか? (徳山雅記)
だれもが知っている有名人のキャラクターを活かして、「本当ですか?」と心の底から問いつめたい感じを表現してくれました。秀逸。
*
じつはドラえもん関連の楽しいプロジェクトが水面下では進行しつつあるのですが、それは追々お話しますね。
では、また来週!
2004 07 23 07:01 午後 | 固定リンク | トラックバック
2004.07.16
< 「結婚」評その3 >
さっきスコールみたいな雨がふっていました。今はまた雷が鳴っています。夏ですね。
急に思いだしたので忘れないうちに書いておきますが、今夜放映のNHK「しゃべり場」にゲスト出演しています。観ましょう。
私のこの1週間は、一緒に仕事をしている友人と絶交しようと思ったり、「もっと絶交だ!」と誓ったり、仲なおりしたり……という慌ただしさでした。
格言絵本『結婚するって本当ですか? 〜世界の中心で蹴りたい負け犬〜』(朝日新聞社)の制作作業もほぼ完了し、あとは8月5日の発売に向けて、プロモーションその他の準備をするだけです。8月下旬には映画コラム短歌集『もう頬づえをついてもいいですか?』(実業之日本社)も出ます。
じつは、この『かんたん短歌blog』をもとに単行本をつくる計画もあるんですよ。私としては「かんたん短歌blog傑作集」みたいな地味なものを、いつの日か小さくてセンスのいい文芸系の出版社から出せれば……とか漠然と夢みていたのですが、なんかもうちょっと派手なことになりそう。詳細は追ってご報告しますが、皆さんはどんな本だと嬉しいですか? すでに傑作入門書『かんたん短歌の作り方』(筑摩書房)がある以上、それを超える本をつくりたいんですけれども……。ぜひご意見をトラックバックしてください。そして以前「改作してください」と私に言われた作品は、この機会にしっかり改作して次々と再投稿してくださいね。以前のお題でいい短歌が生まれたら、それも投稿してください。どうぞよろしくお願いします。
*
今週は「171」の投稿を拝見しました。
相変わらず私の心にヒットする作品は少ない。それは私がもはや「結婚」を素朴なものとしては捉えられないせいなのかもしれません。
結婚短歌の話をする前に、以前の投稿作の改作を紹介します。
一人ではできないことにしておこう 得意ぶってるヒロシが見たい (丹生谷歩美)
……ヒロシが気の毒です。負けるな、ヒロシ。
女性の皆さん、こんな短歌を日記に書いて、ヒロシの目につくところになにげなく置いたりしないように。
ヒロシと別れたい時は、そうするのも効果的かもしれません。でもヒロシの傷は深く、ずっと癒えない。
そんなわけで、この短歌の主人公に好感は持ちませんが、反発したくなるパワーはあると思います。
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今週、「結婚」のお題で選んだオリジナル短歌は3首でした。
木綿よりポリエステルも入り混じる乾きの早い結婚がよい (秋野道子)
乾きの早い結婚。わかるようで、わからないようで、気になります。
まあ、純度の高いものがいいとは限らないよね。サントリーの「ゴクリ」というジュースが好きで、今も飲みながら書いてるんだけど、これってグレープフルーツ果汁30%なんですよ。
より正確に「綿100%よりも」という言い方をしないと、言葉足らずに見えるかもしれません。そのへん、推敲してみてください。
「洗脳」というより「染脳」だと思っ あー結婚の話でしたね (伊勢谷小枝子)
だれかがする結婚の話をうざったいと思っていて、話半分に聞いてる感じがよく表現できています。
前半はいろんなバリエーションを考えてくれましたが(blog参照)、私はこれに目がとまりました。
ただ、実際の会話では「洗脳」と「染脳」のちがいを説明するの面倒そう。あくまで脳内会話ということかな。
どうしても結婚指輪が抜けなくて最後の手段を考えている (伊勢悟史)
そんな……指を切断するなんて乱暴なことはやめてください! 石鹸水につけるとか、指に糸をぐるぐる巻きにして締め付けていくとか、いろいろ方法があるんですよ。ネットで検索してみて。
「結婚指輪が抜けなくて」を比喩と捉えると……。あああっ、そんな乱暴な手段はやめて! 逃げずに、まずは当事者にきちんと話をしましょう。離婚は弁護士さんに相談する前に、共通の友人とかカウンセラーに相談したほうがいいですよ。法律は気持ちの解決はしてくれません。
*
「●と結婚してくれますか」の付け句は、7作品選びました。
前よりか後の足が器用です ユリと結婚してくれますか (秋野道子)
ユリというのが人名でなく花であるらしいのがミソ。っていうか、それ一人称じゃなーい!! でも虚をつかれたのでゆるします。
「前よりか後の足が器用です」って、動物? 猫かなんか?
いったいだれがだれに向かって言ってるセリフなのか、ちっともわからないシュールさにひかれました。事実は説明しないで! きっと私の想像よりつまらないから。
「後」は意図的な字足らずでしょうか。「うしろ」と読ませるつもりなら「後ろ」と書いたほうがいいのでは。
一才でミケでしっぽが長いです ワタシと結婚してくれますか (くくりくみ)
これは猫ですね。ユリよりは安心。でも猫に結婚はないと思う。
結婚とはあらゆる生き物の中で人間だけがする愚鈍な行為……と、シェークスピアも言っています。嘘だけど。
憧れのひとは杉本彩ですがあたしと結婚してくれますか (きみどり)
……ごめんなさい。そっちのほう、自信なくて。
風がつよくて嫌な返事は聞こえない 私と結婚してくれますか (英田柚有子)
「いえー! いえース!」
いい返事も聞こえないです。
ねえ花子 子供は太郎でよいそうです 山田と結婚してくれますか (天国ななお)
なぜ花子にあなたがそんなこと頼んでるのか不明。
「子供は太郎でよいそうです」とまで。他人のプライバシーに踏み込んで……。あなたは山田の何?
その鬼畜ぶりに1票。
ぼぼぼぼぼ ぼぼぼぼぼぼぼ ぼぼぼぼぼ ぼくと結婚してくれますか (高橋えっくす)
これは、この付け句フレーズだったら必ず出てこないといけない模範回答だと思うんだけど、意外と今までなかった。
その、つまり、何ていうかさ、だからほら、僕と結婚してくれますか (高橋えっくす)
これも同じ。両方つかうと、素朴なふりをしてるだけのプレイボーイと看破されてしまいます。気をつけて。
*
以上です。
最後に新しい付け句フレーズの提案があります。
「結婚するって本当ですか?」
そう、私の格言絵本の書名は、もともと付け句フレーズにつかおうと思っていたものなんですよ。
さっそく平賀谷友里さんがそれに気づいて、こんな作品を投稿してくれています。
ゲイだって言ってたじゃない ねえあした結婚するって本当ですか? (平賀谷友里)
ゲイだって結婚してもいいじゃない、ねえ有森さん?
私は離婚してから自分の中のホモ心にますます敏感になるばかり。毎日新聞の連載でも男優の顔の話ばかりしては、絶交寸前の悪友ライターむらやまじゅんに怖がられています。麗しい女性の方はもちろん、かっこいいゲイの方がいたら、近づいてきてくださいね(ただし、男性経験はまだないので、お手柔らかに……)。顔写真必須。当方は身長183、体重63です。結婚にまで至った恋の傷が癒えてないので、今はわりきったおつきあい希望(半分冗談)。
あ、ココログをmixiにしちゃって、ごめんなさい。
では、また来週!
2004 07 16 07:07 午後 | 固定リンク | トラックバック
2004.07.09
< 「結婚」評その2、「あららプチ特集」 >
涼しい。
地味な蝉時雨が続いていて聴覚的には暑いイメージなのですが、少し肌寒くて長袖を羽織っているくらい。
予告どおり、軽井沢に来ています。といっても山小屋の中で黙々と仕事してるだけなんですけれども。きのうの昼に来て、きょうの午後東京に戻ります。
きのうは働き者でした。8月あたまに出るプレゼント絵本『結婚するって本当ですか? 〜世界の中心で蹴りたい負け犬〜』(朝日新聞社)の、すべての執筆編集作業が終わり、じつにすがすがしい気分です。
あとがきに書き添えませんでしたけどね、「軽井沢にて。」とかは。
あ、今月のお題を「結婚」にしたのは、この絵本の発売を記念して……です。うっかり売れてしまいそうな本なので、もしも続編をつくってくれと言われたら、皆さんの「結婚短歌」を集めて1冊にできないかな、とかいう下心もあるんですよ。
軽井沢といえば、長嶋有さんの『ジャージの二人』(集英社)。主人公たちが軽井沢にてあまり素敵でない夏を過ごす話です。大傑作離婚小説『パラレル』(文藝春秋)と並んでおすすめします。あ、後者はあさっての毎日新聞の連載でも紹介しました。
*
今週は「176」の投稿を拝読しました。
「佐々木あららプチ特集」を次回やりますと予告しておいたせいで、皆さんのテンションが落ちてしまったのでしょうか。それとも「結婚」というのが難しすぎるお題なのでしょうか。今回、私が選んだのはたったの3首でした。
*
梶くんと結婚します。佐藤くん、さよなら。小野くん、もっとさよなら。 (田丸まひる)
句読点をつかうと、それだけで意味ありげになるので避けてくださいと今まで何度かお話してきましたが、この作品に関してはまあ、目をつぶってもいいでしょうか。
その昔「もっと絶交だ!」という名言を書いたのは枡野浩一で、それはじつは故人に対して「もっと死ね!」と書いた橋本治の影響なのですが、なるほど「もっとさよなら」と来ましたか。
これは発見でしたね。ドラマのタイトルとかにつかえそうです。『もっとさよなら』。すでにあるのかな。ネット検索したら出てきそう。
でも短歌全体として、きれいに仕上がっています。
テーブルに鯛があるのは大切なことだと思う 結婚したい (柴田有理)
「結婚したい」に至るまでの前半が意味不明で、それでいて結婚式には欠かせない「鯛」があったりして、気になりました。
柴田有理さんの短歌はいつも、一見でたらめのようで、そのじつ作者の中に「こうでなくっちゃ」という思いこみがきちんとある感じがします。
傘はあげる ひとりの老後が嫌ならば結婚ぐらいしてあげたのに (平賀谷友里)
これは「結婚ぐらいしてあげたのに」というフレーズにひかれました。
「ひとりの老後が嫌ならば」は身もふたもない、工夫のない表現ですが、そこが逆になまなましさを出してるのかも。
傘はもう返してもらわなくていいのですね。
傘を貸してあげていた相手が、自分以外のだれかと結婚したのかなとか、いろんなストーリーが浮かびます。
*
そんなわけで「佐々木あららプチ特集」です。
皆さん、『もっと恐ろしいタコのしめかた』をご覧ください。
すでにとりあげたことのある短歌も、「結婚」の新作もまぜこぜにして、あらら短歌の魅力と欠点をともに見つめてみることにしましょう。
庭先でゆっくり死んでゆくシロがちょっと笑った夏休みです
老いた病気の猫を看取ったことがあります。まさに「ゆっくり死んでゆく」といった感じでした。
夏休みのまぶしさと、迫りくる死の冷ややかさ。その鮮やかな対比を結びつけるかのように、シロが今「ちょっと笑った」……。
夏になって読み返すと、「名作」感が増していますね。
愛妻を待ち受け画像にする竹田 微笑ましいぜ ゲロ吐いてやる
ゲロを吐かずにはいられないほどのうらやましさ。ほんとうは微笑ましい愛を切望してやまない自分。
真にゲロを吐きたいのは、そんな自分に対してなのかもしれません。
ゲロ短歌界の最高峰。
笑うしかないほど寝坊した朝もインドネシアは常夏だろう
笑えない駄洒落を聞き流す今もインドネシアは常夏だろう
笑いつつ一人ふとんを敷く夜もインドネシアは常夏だろう
3首のうち真ん中のだけ完成度が低い。「聞き流す」のところのリズムが駄目です。
以前とりあげたときは1首目だけ紹介しましたが、3首目もわるくないですね。笑いつつ一人ふとんを敷く。ゲロで駄目になった竹田の携帯のことを思いだしているのでしょうか。
もう一度僕を「ふふん」と笑ったら君の大事な猫を殺すよ
わかります。一気にではなく、ゆっくりと殺してゆくんですね。
ふふん。
路地裏でにやりと笑う黒猫に僕の行為をすべて見られた
こうして見ると、あらら短歌は笑ってばかりです。
自らの悲しみから目をそらすかのように。
「ぼっち」とか「きり」とか「だけ」っていう尾っぽすら逃げちまい どうする? 「ひとり。」
笑うしかないね。
ひとりで。
もういない妻とのチャンネル争いを思い出さずに観る巨人戦
これは「思い出さずに」とあえて書くことで、じつは思い出しているということを伝えています。常套手段だけど。
口偏に書き間違えてやろうかとふと手を止める祝いの手紙
示偏に書き間違えてみようかとふと手を止める呪いの手紙
後者が傑作!
でも何の説明もなしに後者1首だけ読むと、屈折がありすぎるかな。
2首セットで味わいたい。
それなりに心苦しい 君からの電話をとらず変える体位は
心だけでなく体も苦しくない? 変えるとき。
みんなしてジェンカを踊る夢を見て静かに並ぶ銀行の列
このへんが、あららの課題ですね。
この1首は何度も改作しているけれど(blog参照)、「内容」はまあよくわかります。ただ、これなら短歌にしないで、エッセイとか小説のワンシーンにしたほうがより面白いかも……と思ってしまう。
どうやって流していいかわからずに もう10分も出られずにいる
んー、このへんも同様かな。
面白いんだけど。
このままでも、いいといえば、いいんだけど。
小松原くんのことなら心配はいらない 今日は服を着ている
小松原くんのことなら心配はいらない ヨガに通い始めた
小松原くんのことなら心配はいらない 彼はゾウと話せる
小松原くんのことなら心配はいらない 夜に笛は吹かない
小松原くんのことなら心配はいらない ちゃんと海に帰った
この連作だと、最初の1首だけが面白いです。私には。
いつもは服を着てない小松原くんが心配でなりません。
さて。今回も今までもとりあげなかった作品は、どれも「気持ち」はわかるものの、短歌としての完成度は低いと思います。没。
佐々木あららにセンスがあると思うのは、他人の作品の面白さをきちんと察知し言及しているときですね。何が面白いかがわかっている人は、勝手に面白い作品をつくっていくでしょう。
ますますのあららを。
期待しつつ、敬称略でお届けしました。
*
次週も「結婚」で募集しますが、難しいみたいなので、付け句も本格的に募集してみましょうかね。
以前、ここの掲示板で投稿を募って、以下のような傑作が集まりました。これを超えるような面白い付け句、もし生まれたら投稿してください。
下の句「●と結婚してくれますか」の「●」には、「僕」「俺」「私」など一人称をいれます。「結婚してくれますか」の言いまわしは、自分流にアレンジしないでください。
(あと、皆さんがこの付け句フレーズをつかって付け句遊びをして、ご自身のサイトで発表したりすることまでとめる気はありませんが、この付け句フレーズにはもともとの作者もいますし、これを付け句としてつかうというのは枡野浩一の企画ですので、そのへんはご考慮くださいね。というか、ご自身のサイトで発表してないで、こっちに投稿して!)
付け句をまとめた絵本『どうぞよろしくお願いします』(発行=マーブルトロン、発売=中央公論新社)も、どうぞよろしくお願いします。
●夕焼けのきれいな場所を教えます
ぼくと結婚してくれますか (渡辺百絵)
●一人でも生きていけると思うけど
わたしと結婚してくれますか (平山理砂子)
●夫にも妻にも内緒で三日間
私と結婚してくれますか (佐藤真由美)
●永遠に愛せないなら何回も
わたしと結婚してくれますか (長瀬大)
●にんじんもほうれんそうも食べました
ボクと結婚してくれますか (寅衛門)
●幸せになってみようと思います
僕と結婚してくれますか (ごみたゆうこ)
●この中に加護亜依はいらっしゃいますか
僕と結婚してくれますか (斉藤斎藤)
●今何て言おうとしてたか当ててあげる
僕と結婚してくれますか (中川愛)
●来年度当初予算はこのくらい
僕と結婚してくれますか (浅香まなみ)
●ただひとり君を欲ばりたいだけだ
僕と結婚してくれますか (杉山理紀)
●侍は座って半畳寝て1畳
拙者と結婚してくれますか (梅本直志)
●世界一きみといっしょにいたいんだ
僕と結婚してくれますか (杉山理紀)
●トレーからパンがあふれて落ちそうな
僕と結婚してくれますか (松岡千恵)
●バイバイをいつも10回言う君は
私と結婚してくれますか (大石ユキ乃)
●うっかりとあなたの夢を見てしまう
僕と結婚してくれますか (あきつよう子)
●この冬の鍋をあなたと囲みたい
わたしと結婚してくれますか (あきつよう子)
●春が来るまでの間でいいんです
わたしと結婚してくれますか (あきつよう子)
●もっとずっとあざとい部分で欺いて
あたしと結婚してくれますか (倉重あやか)
●形から入ってみてはどうでしょう
僕と結婚してくれますか (葉子)
●傷つかない加工なんかはいりません
あたしと結婚してくれますか (小野伊都子)
●その恋の相手が死んでしまったら
私と結婚してくれますか (赤星眞弓)
●悪魔さんこれでほんとにあの人は
僕と結婚してくれますか (野田修平)
●「はい」か「うん」若しくは「YES」で答えてね
私と結婚してくれますか (野田修平)
……付け句をまとめた本がまたつくれたらいいな、と私は夢みています。出版社募集中。
*
今週は以上です。
これから軽井沢名物の、アウトレットの店でスニーカーでも覗いてから東京へ戻ります。
では、また来週!
2004 07 09 01:24 午後 | 固定リンク | トラックバック
2004.07.02
< 「結婚」評その1 >
「結婚」ねえ……。
*
1行目を書いてから1時間半もパソコンの前でぼーっとしてしまいました。
こんなお題にしてしまったことをちょっと後悔している自分もいます。
今週は「215」の投稿を拝見しましたが、んー、打率はわるかったかなあ。ま、難しいお題であることは予想どおりなんで、こんな調子でやっていきましょう。
*
そうだ。ココログのお隣さん同士である吉井怜さんhttp://yoshiirei.cocolog-nifty.com/と、ラジオの生放送やりましたよ。短歌選びのセンスがいい(←重要)、素敵な方でした。
ココログも新しい仲間が続々と増えていて凄いですね……。相対的に枡野浩一の無名度がいっそう目立って心苦しいかぎりですが、有名人の皆さんにもぜひ短歌に挑戦していただきたいものです。昔は室井佑月さんも短歌をつくって見せてくれたりしたのに(『かんたん短歌の作り方』参照)、時の流れとは残酷なもの。
というわけで、コメントは結婚式の仕切りのように淀みなく。
*
メリットがあればいいのよ女にも 結婚すれば歳とまるとか (紫月美夜)
さすがですね。「結婚」というものについて考えている時間の長さの勝利、というか。
でも男にはどんなメリットがあるの?
*
独身のひとと結婚したいのでぼくの彼女と別れてほしい (みうらしんじ)
まちがいだらけです。
結婚というのはそもそも独身のひととするもの、という社会常識を一瞬忘れてしまっているようですね。
でも松尾スズキさんも言っているように、恋する人は狂っているもの。その狂気を正確に描いてくれました。
*
正座して結婚しようという僕にニャーと鳴くのはイエスかノーか (きみどり)
それは……。
「ノー」じゃないかな……。
*
結婚をした瞬間に脇腹が痛くなるって本当ですか (辻一郎)
本当らしいですよ。
で、離婚した瞬間「脇腹以外全部」が痛くなる。
*
結婚に向いていそうな奴だけど結婚式には向かない顔だ (伊勢悟史)
式をあげないという手もありますね。
*
おじいちゃんこれからお米を投げるけど結婚祝うためなのごめん (龍見元菜)
おじいちゃんこんな優しい子に育ってしまったせいで結婚はまだしてないけどごめん。
*
前菜のキャビアが妙に口に合い この結婚を呪えずにいる (佐々木あらら)
デザートまで口に合いますように……。
結婚後二年もすればそれぞれの行きたい向きは末広がりに (佐々木あらら)
スピーチではそんなこと言いませんように……。
阿佐ヶ谷で一番うまく踊れます 僕と結婚してくれますか (佐々木あらら)
これは佐々木あららさんも書いているように、私が昔やってた「付け句」そっくりになってるんだけど。
今回のテーマは難しいから、付け句に挑戦したい人は、どうぞ。(今週、「●と結婚してくれますか」の付け句を投稿してくれた人はほかにもいましたが、完成度がいまひとつでした)
*
ちらり散る花びらシャワー浴びる春 あした誰かと結婚したい (栗原あずさ)
これは後半がよかった。「あした誰かと結婚したい」という唐突すぎる欲望が。
でも前半は雰囲気に流れすぎです。改作してみてください。
*
ストローをパックのお茶にまたくれたあのひととなら結婚したい (きみどり)
これも後半がよかった。「あのひととなら結婚したい」。
でも前半は説明不足です。実際にあった出来事だとしても、作者ひとりだけがわかってる感じになってしまってますので、改作してみてください。
この下の句にふさわしい上の句は、付け句として皆で考えても面白いかも。
*
結婚をしていることを前提に付き合ったのに何で怒るの (天国ななお)
正論です。
でも正論って喧嘩のとき言うと、相手をより怒らせるだけだそうですよ。怒ってる相手に何を言っても無駄。結婚したり離婚したりすると、そういうことがわかってきます。
刺されないよう気をつけて。
*
結婚後何かお変わりありますか? 私はやっぱりジュディマリが好き (平賀谷友里)
後半、推敲を重ねているようですね。もうひと息。これが正解、というフレーズがきっと見つかると思います。
この短歌は「ジュディマリ」であるところがよいですね。「ドリカム」だと×。
私の好みの問題もあるけど(ジュディマリは好きでも嫌いでもない)、好きだからといって「Theピーズ」とかをいれてしまうと怖い短歌になってしまいそう。
*
私だけ名字が変わってないけれど友介(伊勢谷)と結婚したの (伊勢谷小枝子)
…………。
そこまで言い張ってくれれば、あなたはもう、勝ち犬です。
おそれいりました。
*
以上。
*
来週の今ごろは軽井沢にいます。
あまりにも原稿書き以外のことをしていない毎日なので、死にたくなる前に、旅に出ることにしました。
うまくいけば軽井沢の山小屋から「佐々木あららプチ特集」をお届けする予定なのですが、パソコン環境の問題で失敗したらごめんなさい……。
もしかしたら更新自体が若干遅れるかもしれません。あらかじめ、おわびしておきますね。
ではまた来週。










