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2008.02.20

< バレンタインと破廉恥 >

とうにバレンタインも過ぎましたが、
佐々木あらら他が考えた
「チョコことば」
http://ararara.exblog.jp/8000325/
は、
すごく面白いと思います。
見事なまでにお金にならない企画だけれど……。

そんな愉快な企画をご紹介したあとで、
あんまり嬉しくない出来事の
報告をしなければなりません。

気づいた方もいらっしゃるようですが、
『ショートソング』(集英社文庫)にも出てくる
私の短歌、

 辞書をひきバレンタインが破廉恥の隣にあると気づいている日  
 ——枡野浩一(角川文庫『57577 Go city,go city,city!』より)
57577―Go city,go city,city! (角川文庫)

と酷似した作品が、
ある短歌コンテストの入選作に選ばれ、
のちに取り消されるという出来事がありました……。


一月の終わりに
「東洋大学広報課よりお詫び」
というメールが届いたとき、
そのタイトルを見た瞬間に
内容の大まかな想像がついてしまいました。

きっと私の短歌と酷似した作品を
うっかり入選作に選んでしまったのだろう、 と。
東洋大学は昔から「現代学生百人一首」という
企画をやっているのです。
http://www.toyo.ac.jp/event/issyu/index.html

以下は、
その「東洋大学広報課よりお詫び」
というメールに対する、
私からの返信です。






From: 枡野浩一
Date: 2008年1月25日 21:21:15:JST
To:
Subject: Re: 東洋大学広報課よりお詫び


はじめまして、枡野浩一です。
ご事情はわかりました。
特に、足を運んでいただく必要はありません。

ただ、
公式サイトでは曖昧な書き方をせず、
枡野浩一の元歌

 辞書をひきバレンタインが破廉恥の隣にあると気づいている日  
 ——枡野浩一(角川文庫『57577 Go city,go city,city!』より)

を正確に引用し、
出典(角川文庫『57577 Go city,go city,city!』より)も明記し、
「この歌と酷似していることが判明した作品の入選を取り消しました」
といった意味のことを、書いておいてください。

酷似している学生作品のほうは、あえて引用しなくてもいいと思います。

短歌は、
意図的に盗作をするつもりなら、
もっとエッセンスだけを上手に真似る、
というようなことも可能だと思っています。
なので学生に悪気はなかったのでしょう。
一番売れている私の短歌小説『ショートソング』(集英社文庫)に
あの歌が目立つ形で引用されているため、
どこかで学生の記憶にひっかかっていたのかもしれません。

とはいえ、
以前も俵万智さんの短歌(山田かまち作品の短歌化)が
入選して取り消されたことがあったと記憶しています。
選考される側の皆さんは、
一般に広く流通している歌集くらいは
ざっと目を通されておいたほうがいいのでは、と思います。
それでもすべての短歌を知ることは不可能なので、
どうしても「盗作」を選んでしまうことは
あるかと思いますが、多少は防げるでしょう。
私はある短歌コンテストで選考委員をした際、
「あまりにも上出来。前例がありそう」
と感じる投稿作品を読んだ時は、過去に類似作がないが、
ネットでキーワード検索をして調べました。

とりいそぎ、簡単ですが、お返事まで。
【以下、事務的な内容の文言を数行省略】

枡野浩一






その後、
紆余曲折はあったものの、
私の希望どおりの対応がなされて、
ほっとしていたのですが……。

2月2日(土) 付の
毎日新聞東京版27面に掲載された
「現代学生百人一首」記事の中で、
入選が取り消された問題の
一首が取り上げられてしまいました。

その件を東洋大学から
報告されたときの
私の返信は以下のようなものでした。






From: 枡野浩一
Date: 2008年2月5日 2:55:19:JST
To:
Subject: 枡野浩一です。

新聞の記事自体は見ていませんが、
ネットにその記事の感想がいくつか載り、
そちらを読みました。
私が恐れていたことが起こってしまい、
残念です。

しばらく様子をみて、
読者から私のところに連絡が来るようであれば、
自分の「かんたん短歌blog」
http://masuno-tanka.cocolog-nifty.com/
などで報告しようと思います。
黙っていると逆に不自然ですので……。

短歌の作者は伏せ、
彼のことは責めないようにしますが、
すべてのネット記事を
消して回ることは無理ですし、
時間を経てからも
新たな反響はあると思います。

また何かありましたら
ご報告お願いします。
フォローできることも
あるかもしれませんので。

枡野浩一






と、
まあ、
そんなわけで今もネットには
「枡野浩一の短歌と酷似した作品」が
残ってしまっていますが、
皆さん、
そんな経緯があったことをご了解ください。

なお、
私の「盗作」に関する考え方は、
毎日新聞に連載していた
『日本ゴロン』(毎日新聞社)
という本に詳しく書きました。
ご参照ください。
日本ゴロン

2008 02 20 12:49 午前 | 固定リンク

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