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2008.12.31

< 辰巳泰子さんの結社/松下知永さんの寄稿 >

今年最後の更新です。

辰巳泰子さんから「月鞠」を送っていただきました。
結社誌としてのスタート、おめでとうございます!
http://www.geocities.jp/tatumilive/kessyatukimari.htm

私自身は歌人としての考えがあり、
結社活動に直接ご協力することはできないのですが、
歌人・辰巳泰子の活動は今後も楽しみでなりません。

年明けに朗読ライブがあり、
その会場でも「月鞠」が入手可能とのこと。
皆さんもぜひ入手して読んでみてください。
http://www.geocities.jp/tatumilive/2007livenote.htm

「かんたん短歌blog」や
枡野浩一がもっと昔にやっていた掲示板の常連で、
現在は短歌結社に所属して頑張っているという歌人から
時々ご報告をいただくことがあります。

それはとても嬉しいことです。
皆さんも辰巳泰子さんの「月鞠」をはじめ、
いろんな結社誌や同人誌を知り、
もしも良い出会いをしたと思える場所があったら
参加してみるといいと思います。

参加してみて、やめることもあるでしょうし、
また別の場所に移ることもあるでしょう。

大切なのは自分の呼吸のしやすい場所を見つけること。
(場所、というのは結社に限らず……)
そして、続けることです。

自分を甘やかしてくれる場所を見つけよう、
という話ではないですよ。
もとより、呼吸困難なのが、書くことですから。

師匠がいても……。一人でも……。
批判されても……。無視されても……。
いずれにせよ呼吸困難です。

続けられない人は、やめてしまっても全然いいと思います。
(筑摩書房『かんたん短歌の作り方』あとがき参照)
でも、また始めたい、もっと続けたいと思ったら、
そのための方法は試行錯誤しましょう。真剣に。

今年は短歌と関係ない仕事ばかりしていた私ですが、
来年は短歌の仕事をしたいです……。

さて。
かつて「かんたん短歌blog」に投稿していて、
結社「未来」に所属し、
今はまた一人で歌を続けているという
松下知永さんから素敵な投稿がありました。
ありがとうございました。

短歌+エッセイというのは、
私もよく書いていますが、なかなか難しい表現です。
皆さんも挑戦してみてください。

松下知永さんのは軽妙な仕上がりですね。
エッセイなしで歌だけ見たとき自立性が弱いかな……。

短歌の肉は3キロに減らさず、
「9キロ」にしたりしてもいいかも。
「10キロ」だと大雑把な感じがするから。

あと、
エッセイ本文三行目の「台湾の」をあえて削ると、
文章に緊張感(と意外性)が出ると思います。
お試しください。








寄稿=松下知永(まつしたちえ)

■簡単な経歴
2004年の春に『かんたん短歌blog』に投稿、短歌を始めました。
その後、朝日カルチャーと未来で、岡井先生に師事。(短い間です)
仕事が多忙で身体を壊して未来をやめ、1年ぐらい短歌も休み、
現在、短歌的な活動はナシ。総合誌に投稿したこともありません。
ことし角川短歌賞に応募、最終候補に残りました。
無得票で、逆にちょっと恥ずかしいですね。

日記「まさゆめ*さかゆめ」http://chekhovdiary.blog70.fc2.com/
題詠「題詠ショコラ」http://chieuta.blog96.fc2.com/






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『周くんのこと』

その頃、わたしは広告プロダクションで働いていた。
ある日、周くんという
台湾の、ちょっとかわいい男の子がデザイナーとして入社した。
細い手足をしていて、その頃売れてたロックグループのボーカルに似てて
わたしと同い年なのに、もっとずっと若く見えた。

女の子に人気があった。
『しゅう』という、名前の響きがいいのかしら。
女の子たちは、シュウ、シュウ、って、
まるでシュウウエムラみたいなそんなニュアンスで呼ぶけど、
ほんとは、漢字の周くん。
下の名前は忘れた。

周くんは台湾のひとのせいか、
家族もとにかくインターナショナルだ。
お母さんを台湾に残し、
お兄さんはアメリカ、お父さんはヨーロッパでビジネス、
そして、お姉さんと彼は日本に、という具合。

初めて会った頃、オフィスで
「ボクのコドモウム?」 とわたしに言い、
みんなを黙らせた。
インターナショナルって、なんかまあ、
そんなんらしいです。
たぶん彼にとっては、「ボクのコドモウム?」 なんて
だれかの下ネタくらいに自然なことなんだろう。


彼は職場でコーヒーやお茶は一切口にせず、
代わりに高麗人参茶を飲んだ。
大きな蓋付きのマグカップに、
立派な高麗人参をそのまま入れて、お湯を注ぎ
じっくりじっくり飲む。
なにか、身体によさそうなものがじわじわ抽出されてそうな色・・・。
ルックスはロック、
マグカップには二股の高麗人参。


ある日、遊びの流れで、みんなして彼の部屋に押しかけた。
キッチンには、立派な
大家族もへっちゃらって感じの冷蔵庫があった。
彼が、にこにこドアを開け、ほらって見せてくれる。
そこには、10キロ以上ある大きな豚肉の塊が鎮座していました。
いや、鎮座っていうかね、もう、ぎゅうぎゅう。
豚肉ぎゅうぎゅう。
なにか、その瞬間、
淡い恋心が見えない国境に負けてしまったんです。


3キロの豚ブロックにこばまれる周くんの冷蔵庫あければ(松下知永)

10キロにすると歌が嘘っぽくなるので
3キロに減らしています。

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2008 12 31 09:39 午後 | 固定リンク

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